福島県の西部に位置する会津若松市は、周囲を磐梯山や猪苗代湖などの四季の変化に富んだ美しい大自然に囲まれています。
この会津の地で漆工芸が根付いたのは、天正18年(1590年)。豊臣秀吉の命を受けた藩主・蒲生氏郷(がもううじさと)公が産業として奨励したのが始まりです。1860年代後半の幕末の戦火で壊滅的な打撃を受けながらも、明治中期(1890年前後)には再生し、発展。日本有数の漆器の産地としてその名を広め、今へとつながります。

そしてこれから・・・ さらに未来を見つめ、伝統を守りつつも新しい時代の風を感じ、歩みをすすめる必要があるでしょう。私たちは、400年の時に磨きあげられた技術と新しいデザインの感性の融合による、新しい“ものづくり”に励んでいます。

職人の手と心をつなぐもの 

人の手による仕事には、ぬくもりがあり、美しいものです。会津の漆器作りには、それぞれの工程に独自の職人が存在します。製材された原木から板物木地を作る惣輪師。同じく丸物木地を作る木地師。板物を塗る板物塗師と丸物を塗る丸物塗師。そして上塗りまで完成した漆器に加飾を施す職人・蒔絵師。彼らは自然や時間に逆らう事なく、素材との対話から逸品を誕生させます。そうして完成した「会津塗」の特徴は、上塗り漆に油を加えることで独特のつやと気品ある塗り肌に仕上げる“はなぬり”や、刃物で浅彫りした塗面に漆と金箔を刷り込む“沈金”、厚く盛った“高蒔絵”などの技法。たくさんの職人の手と心がつながって、はじめてひとつの漆器が生まれます。